検査で「異常が見つからない」と伝えられた方へ
今抱えている症状で医療機関で診てもらったけど「異常は見つからない」「様子を見ましょう」と伝えられた方は多いと思います。
私も長年”診療放射線技師”として検査する側にいて、実際にそうした方々にも多く接してきました。
検査を受けるだけでも疲れてしまいますよね。大変な思いをして検査に臨んだのに「不調の原因が見つからない」と伝えられたらガッカリしますよね。こういう時は、その真意を理解すると、東洋医学(鍼灸)を試してみる価値が見えてきます。
私の前職である診療放射線技師は診断行為は出来ないものの、異常を訴えられている場所を的確に狙い画像に納める事をしています。きちんと描出できているのか、確認も行っています。
しかし、やはり異常に該当するようなものが画像上では見当たらないというケースは多々あります。
私としては「こんなに痛がっているのに何で何もないんだ?」。
身体の考え方を変えたら何か分かるのだろうか…という思いが鍼灸師の道に入った切っ掛けの一つです。
ここで、一つ皆さんに知っていて欲しい事があります。
当たり前のことですが医療機関で行う医療・検査は全て「西洋医学」です。西洋医学の理論で治療を行う事を目的に様々な検査を行います。
「異常が見つからない」と言うお話は、正確に言うと「西洋医学で治療する上での検査では異常値として引っ掛かって来ない(引っ掛けられない)」と言う意味です。言い換えると「もしその検査で引っ掛かれば西洋医学と言う手法で治療が行うことができる」と言う事になります。
検査で何も分からなかった場合、その症状に対して治療(標準的治療と言います)が出来ないというのが西洋医学の基本です。誤解を恐れずに言えば、その症状は「西洋医学で解決できる範疇には無い」という事です。
「分からなかったからダメだ」とは考えないでください。
稀に、「見落としていた」と言うニュースなどが出ますが、これは困ったものです。
しかし、病院の検査(西洋医学)で異常が見つからなくても、もし貴方に辛い状況が続いていれば、やはり身体のどこかに異常がある状態と私は考えます。
そこで、西洋医学の範疇では無いとするのであれば、今度は東洋医学的な面から身体の状態や抱えている辛さを診させていただくと、何かしらの異常(この場合は東洋医学的な異常)を把握できる場合があります。
これが、東洋医学で担える(施術治療できる)分野となります(東洋医学の範疇)。
私が実際に整形外科で鍼治療を行った時の一つのケースです。
「全く肘が動かない。伸ばそうとすると激痛」と言う方がいらっしゃいました。
そうなった切っ掛けは買い物帰りに荷物を持とうとしたときになった、とのこと。
私が放射線技師としてレントゲン撮影を行い、画像を確認してもどこにも異常が見つからず、医師から見ても異常は見つからない。リハビリ室で色々やっても改善傾向がみられない。
そこで鍼灸師でもあった私が呼ばれ、今度は東洋医学的に症状を観察すると別の部分が見えてきます。そして、鍼を刺すツボも複数見えてきます。
鍼治療が終わり帰られる頃にはまだ少しツッパリ感は残っていたものの、だいぶ動くように。
そして翌日のMRI検査の予約を取って帰られたのですが、翌日には痛みの訴えも無く、そのMRI検査はキャンセルになりました。
誤解の無いように補足しておきますが、もしレントゲン写真で何か異常が見つかった場合、西洋医学の範囲となるので、西洋医学的な治療をまずは受けてみた方が良いと考えています。
当院において問診を行う際、必ず「今のこの症状で病院に行かれましたか?どのくらい通っていますか?」とお聞きします。これは、東洋医学の範囲で施術対象になるのか、もし東洋医学の範囲で対応するとなればどこを目標にするのか、という大切な判断材料になります。
もし、採血データやお薬手帳をお持ちでしたら拝見させて頂けると大変参考になります。
◎鍼灸の適応疾患
世界保健機構(WHO)やアメリカ国立衛生研究所(NIH)によっても、様々な疾患にその有効性が研究され認められています。
また近年、エビデンスに基づき西洋医学系の各疾患治療ガイドラインでも鍼灸治療が「推奨レベル」と表記されてきているものも出てきています。
「薬を飲むのも嫌になってきた…他に何か方法は無いのか…」と言った方も一つの手段としてご検討してみてください。
【WHOによる適応疾患一覧】
運動器系:腰痛(ぎっくり腰、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変形性脊椎症、ひざ痛、変形性膝関節症、股関節痛、関節リウマチ、頚(くび)の痛み、肩こり、五十肩、寝ちがい、むちうち、捻挫、テニス肘、腱鞘炎、慢性痛等
精神・神経系:頭痛、めまい、不眠、うつ症状、情緒不安、パニック症、自律神経失調症、坐骨神経痛、三叉神経痛(顔面)、肋間神経痛、多発神経炎、手足のしびれ、顔面神経麻痺、脳卒中後遺症(片麻痺)、ジストニア(斜頸)等
消化器系:便秘、下痢、吐き気、ガスによるお腹の張り、急性・慢性胃炎、逆流性食道炎、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎等
呼吸器・循環器系:のどの違和感、慢性鼻炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、副鼻腔炎、喘息、高血圧、低血圧、冷え性等
婦人科系:生理痛、月経不順、月経前症候群(PMS)、不妊症、更年期障害、子宮筋腫、子宮内膜症、冷え性
感覚器系(眼・耳):眼精疲労、緑内障、白内障、網膜色素変性症、耳鳴り・難聴、花粉症等
皮膚:湿疹、帯状疱疹後神経痛、アトピー性皮膚炎等
小児:夜泣き、かんしゃく(疳の虫)、夜尿症、消化不良、情緒不安、チック症等
※赤字部分は当院で良く対応する機会の多い疾患です。他、風邪予防を目的とした定期的なメンテナンス(体質コントロール)や、ダイエット目的から始まり体調維持で通われている方もいらっしゃいます。また、身体の健康状態を万全にしておく事も防災(減災)の一つです。災害後はとても強い心理的(精神的)ストレス、環境的ストレス、物理的ストレスが掛かり、持病や”隠れた持病”にも影響を与えるので、普段から心身共に整えておきましょう。
また医療機関での検査で異常は見つからないと説明を受けたが、やっぱり調子が優れないという場合(特に不定愁訴)も鍼灸が対応になる場合もありますので、お気軽にご相談ください(検査結果などを拝見させて頂けると大変参考になります)。